掌蹠膿疱症とアトピー性皮膚炎の違い「症状・原因・治療方法」

手の平や足の裏に慢性的な膿疱が現れる症状を掌蹠膿疱症といいます。

掌蹠膿疱症は免疫異常によって引き起こされることがわかっており、アトピー性皮膚炎の発症とも関係があると考えられます。

掌蹠膿疱症とは?

掌蹠膿疱症とは、主に「掌(てのひら)」と「蹠(あしうら)」の部位に、無菌性の膿疱が出現する皮膚病です。女優の奈美悦子さんが長年苦しんだ病気としてTVや雑誌などで取り上げられ話題になったこともありました。従来は治療法が確立されておらず、難病、難治性皮膚疾患などといわれていましたが、現在ではビオチン不足による代謝異常と免疫異常によって引き起こされることが明らかになり、治療の継続によりほとんどのケースで完治できるようになっています。

掌蹠膿疱症は、アメリカでは「膿疱性乾癬」と呼ばれ、「乾癬という皮膚病で膿疱をともなう病状」という位置づけです。

掌蹠膿疱症の症状

  • 手の平や足の裏に無菌性の膿疱が現れます。無菌性なので他の人に伝染したりすることはありません。
  • 多くのケースで免疫異常により、主に胸骨、鎖骨、肩などに関節炎を合併します。(「掌蹠膿疱症性関節炎」とよばれます)
  • 症状が進行すると、日常生活が困難になるほどの痛みをともない、骨の変形を引き起こし車椅子が必要になることもあります。
  • 糖質の代謝障害により、糖尿病に似た症状を合併することもあります。
  • そのほか、アトピー性皮膚炎、IgA腎症、クローン病、潰瘍性大腸炎などを合併することもあるといわれます。
  • 代謝異常により、体重減少、抜け毛、脱毛、精力減退、筋力低下、視力低下、爪の変形などを引き起こすことがあります。
  • 糖質やたんぱく質、脂質などの代謝異常が現れて免疫異常がおこり、多くの代謝機能に影響を及ぼすので多岐にわたる合併症が現れることがあります。

掌蹠膿疱症の原因

掌蹠膿疱症はかつては発症原因がわかっていませんでしたが、ビタミンB群のひとつであるビオチン(ビタミンH、ビタミンB7)が不足することで代謝異常と免疫異常が起こって発症することがわかっています。従来はビオチンというと食事から摂取するほかに腸内細菌も作り出すことができるため不足することはないと考えられていましたが、近年ではビオチンが不足してなんらかの症状を引き起こすケースは少なくないと認識されるようになってきています。

ビオチンには糖質、たんぱく質、脂質の代謝に関与する酵素にとって不可欠なビタミンですが、ビオチンが不足するとその酵素の働きが弱くなり、代謝異常がおきます。人間が生きるために不可欠な三大栄養素の代謝障害がおきますから、症状は多岐にわたります。そして、免疫異常によってリンパ球が過剰に抗体を作り出し、通常の何倍ものスピードでターンオーバーが進み、皮膚のバリア機能や正常な新陳代謝が乱れて膿疱や炎症を引き起こすと考えられます。

ビオチンが不足する原因

  • 抗生物質の使用。(ビオチンは食事から摂取するほかに腸内細菌が作り出しますが、抗生物質の使用によって耐性菌を生みだしたり、腸内細菌のバランスを乱してしまうことがあります。腸内細菌のバランスが乱れると、それまで弱い勢力だった腸内細菌が勢力を増やして病原性を高めてしまうケースもあります)。
  • 喫煙、または受動喫煙。(タバコに含まれるニコチンやそのほか有害物質を解毒するためにビオチンが大量に消費されます。タバコをすわない人でも家族が吸っていることで影響を受けるケースも少なくありません)。
  • 飲酒、過食。(アルコールを分解する際にビオチンが消費されます。また、過食もビオチンを消費します)。
  • 生卵のたべすぎ(生卵の卵白に含まれる「アビジン」というタンパク質がビオチンと強力に結合し、ビオチンの吸収を阻害する働きをもっています。ただし、卵白を加熱すればアビジンが変性してビオチンと結合しなくなりますので大丈夫です。また、生卵でも卵黄だけならアビジンは含まれていません)。
  • 乳製品の食べすぎ。(乳製品はビオチンの吸収を悪化させる傾向があるようです。特にヨーグルトは腸内環境を変化させますので、ビオチンの産生と吸収に影響がでるかもしれません。実際に掌蹠膿疱症を発症する人の中に、ヨーグルトを一日に大量に食べるようになってから発症した、もしくは悪化したというケースが少なくないようです)。
  • 精神薬、睡眠薬、抗てんかん薬には、「カルバミド基」や「ウレイド基」という構造をした薬剤があり、これらの構造をした薬剤はビオチンの吸収を妨げます。
  • 一部のビタミン剤。(ビタミン剤の中にはビオチンの吸収を妨げる「カルバミド基」の構造をした成分が含まれていることがあります)。
  • 乳酸菌配合の整腸剤。(乳酸菌の中には腸内でビオチンを食べて増殖する種類もいます。フェーカリス菌などがそれにあたります)。
  • 頻繁な下痢。(ビオチンは腸内細菌が作り出しますので、下痢が続くようではビオチンが腸内で十分にビオチンを作ることができなくなります。
  • 便秘。(便秘は善玉菌が少なく悪玉菌が多い証拠でもあります。ビオチン不足の人では便中の悪玉菌が健常者よりも格段に多いといわれます)。
  • 他にも、免疫抑制剤を使用してる人、人工透析を受けている人、腸を摘出した人などは、ビオチンが不足しやすくなります。

掌蹠膿疱症の治療

外用治療

皮膚の膿疱がひどい部分にはステロイド外用薬を使用することがあります。ステロイド軟膏の副作用を考慮して、ワセリンで薄めたものを使用することがあります。患部に塗りこむようにして使用します。

内服治療

一般に掌蹠膿疱症はビオチン不足による代謝異常と免疫異常が原因とされますので、ビオチンを補う治療になります。ただし、ビオチンをサプリメントなどで摂取してもビオチンを好む腸内細菌の増殖を促してしまい、かえってビオチンの吸収を低下させてしまうことがあります。

そのため、ビオチンと同時に酪酸菌(宮入菌)が配合されたミヤリサン(ミヤBM)を同時に服用します。なぜ酪酸菌(宮入菌)配合のミヤリサンなのかというと、ビオチンを食べる乳酸菌や悪玉菌の増殖を抑えてくれるためです。

また、ビオチンとミヤリサン(ミヤBM)と同時にビタミンCも服用します。その理由は、ビタミンCには免疫を安定させる働きがあり、ビオチン不足によって引き起こされた免疫異常を改善してくれる作用があるためです。そして、ビオチンやビタミンCは水溶性のビタミンであるため、一度に大量に摂取するよりも数回に分けて摂取すべきです。

ビオチン療法の方法

  • ビオチン・・・1回1000μg~5000μgを1日3回毎食後。(関節炎や乾癬のような症状が現れた進行して慢性化した場合は、一日の所要量よりも極端に多くのビオチンを摂取しないと、思うように症状が改善しないことがあります)。
  • ミヤリサン・・・酪酸菌(宮入菌)1回30mg~60mgを1日3回毎食後。(服用量には個人差があります。便の色や状態を見ながら自分に合った量を服用すべきです)。
  • ビタミンC・・・1回300mg程度を1日3回毎食後。(ビタミンCは摂取しすぎると下痢の原因になります。下痢はビオチン療法にはマイナスです)。

ビオチン、ミヤリサン、ビタミンCはすべて市販されています。ビタミンCでおすすめの商品は「ハイチオールC」や「システィナC」です。ビタミンCのほかに代謝障害を改善するパントテン酸というビタミンが含まれます。また、それらの商品はビタミンCの酸度が調整されており、下痢をしにくくなっています。他にも、それらに含まれる「L-システイン」というアミノ酸が肝機能の向上や皮膚の正常な機能を維持する働きをもちます。